noise pop

生活

まっすぐ歩けない

昆虫キッズを久しぶりに聴いている。


昆虫キッズを人に薦めても気に入ってもらえた試しがない。楽しいドライブで流そうものなら「早く消せ」の大合唱だ。僕は昆虫キッズが今のこの日本という国で、どれだけ有数のロックンロールバンドなのかということを力説するが、それは虚しく車内の会話に溶けて、そして無くなっていく。僕はむせび泣く。


昆虫キッズには常に「ファンタジー」という言葉が付きまとっている。それはディズニーランドのような誰でも楽しめるようなものではなく、廃墟になってしまった夜の遊園地である。都会の賑やかな表通りから道を一本外れ、誰もいないひっそりとしたジャンク感溢れる裏通りで鳴らされている音。それが昆虫キッズの音楽だ(と思う)。


一昨年出た「こおったゆめをとかすように」は傑作だった。
3rdでは雰囲気がより鋭利に、そしてもやのかかったような薄暗いファンタジーが漂っている。うかうかしていると半分大人で半分子供のような人間は、そのファンタジーに吸い込まれてしまう。空虚と現実のちょっとした隙間から、昆虫キッズがサッと手を伸ばしてくる。それに逃げられなかった人間がこのアルバムを延々と聴いているような感じがする。


あとは昆虫キッズの紡ぐ言葉のセンスの高さ。インタビューでは「特に意味は無く語感で選んでいる」と語っていたが、音楽の他に映画やゲームなどの引用でも「そこにいくのか」というチョイスの仕方。ちゃんと作品を消化して、そして体外に放出している。個人的に「ASTRA」の「あの夏 一番静かな夜」という歌詞や「あずきくん」のPVでの公衆便所でのビンタなど、北野武から影響を受けた箇所が好きだったりする。


昔とあるバンドが「僕らのアルバムには様々なパロディーがあるのでそこら辺にも注目して聴いてくださいねー」と言っていた。馬鹿なんじゃないかと思った。そんなもん自分でどや顔して言うもんじゃなかろうに。そしてそのパロディーも隠し方がダサすぎてなにがなんやら。


とりあえず昆虫キッズを聴くのだ。それでちょっとでも「いいな」と思えたら、僕とあなたは友達だ。