noise pop

生活

1.銀杏BOYZ/光のなかに立っていてね,BEACH(2014)

ある日突然「青春パンク」が嫌いになった。中学時代にはかなり聴いていたはずだ。だけどいつの日からか「こいつらの言ってることは全部嘘だ」と一気に毛嫌いすることになった(以前やっていたブログの記事に「青春パンクは死ね」というタイトルがあった)。嫌に説教臭い歌詞、パワーコード、お前らのことは全部分かってる感満載のどや顔、ストラップの位置、音はスカスカで曲調も短調、生きてりゃいいことあるよ、飛べ、暴れろ。とにかく全部嫌いになった。高校時代に青春できてなかったのになにが青春パンクだよ、と聴いていた過去を所謂「黒歴史」にすることでなんとか気持ちの沈静化を図った。


あれから数年経った。大学を卒業して周回遅れで社会に出た。自宅のCD棚では青春パンクのCDは絶滅していた。そんな何もかも忘れていた時に銀杏BOYZのアルバムが出るというニュースが耳に入ってきた。
高校1年生のとき、地元のTSUTAYAGOING STEADYの1stと銀杏BOYZの「DOOR」を同時に借りてきたのが最初だった気がする。ゴイステの方は当時僕が嫌いになりかけていたメロコアの匂いがプンプンしていたので、あまり入り込めなかった。そしてその音量のまま、銀杏BOYZのCDを再生した。爆発した。コンポが壊れたかと思った。ただただうるさい音楽。それが最初。

DOOR

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君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命

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そこから僕はこのGOING STEADY・そして銀杏BOYZボーカルの峯田和伸という男の動向を随時チェックし始める。ブログは全部読んで、紹介された音源も可能な限り聴くようにした。もう白状してしまうと、僕が高校時代にブログをやり始めたのはこの人の影響だ。書籍化された「恋と退屈」も勿論買い、ツアー初日で骨折したという記述を興奮しながら友達に教えていた。自分が骨折したわけでもなかったのに。痛々しい信者も同然の行動だった。当時やっていたモバゲー(めちゃくちゃ懐かしい)の自分のページにも銀杏BOYZという単語を入れて「イケてない俺格好良い」という雰囲気を出していた。ここまで書いてとても死にたい気持ちでいっぱいだ!


そして大学4年生の時、銀杏BOYZが仙台でライブを行うというニュースが飛び込んできた。大学生。世間で最も暇な人種といっても過言ではない身分だったので、チケット発売当日は朝の6時にライブハウスへ行き、6時間並んでチケットを取った。ライブは想像以上にグチャグチャで汚くて今何の曲をやってるのかも分からないくらい音がでかかった。だけど僕は自分でも出したことのないような声で叫びまくった。今俺はあの銀杏BOYZのライブを見ている、体感している。それ以上でもそれ以下でもない。その事実だけで泣きそうになっていた。青春パンクは嫌いだったが、銀杏BOYZだけは嫌いになれなかった。CDだって大切に棚に収まっている。
もう青春パンクには興味がないふりをしていたはずだったのに。それくらい銀杏BOYZは特別な存在だった。高校時代、隣のサッカー部の部室から「BABY BABY」を笑いながら歌う声が聴こえて何だか異常にムカついたこと。学祭で同級生が銀杏BOYZのコピーバンドをやっているのをボケっと見ていたこと。大学時代、初めてバンドを組んで銀杏のコピーをしたが難しすぎて全く弾けなかったこと。今思い返してみると、気持ち悪いほど僕は銀杏BOYZに寄り添っていた。


今回出た9年ぶりの新譜。「光のなかに立っていてね」「BEACH」の二枚。タワレコで高校からほとんど使っていなかったポイントを5000円分使って購入した。最初に再生したのはライブミックスアルバムの「BEACH」。前述した仙台でのライブの音源も入っているからだ。再生するとヘッドホンからとんでもないノイズの大洪水が溢れ出てくる。大音量で聴いていると何だかよく分からない怖さを感じた。後ろを振り向く。もちろん誰もいない。それくらいの鬼気迫る恐ろしいまでの情報の波が押し寄せてくるのだ。このノイズはマイブラの比ではない。メルツバウなんかの聴いていると頭がおかしくなってくるような麻薬のようなノイズだった。ライブミックスは多少覚悟はしていたが、「光のなかに立っていてね」はそれに負けないくらいのノイズサウンドの海だった。完成した絵画に何回も何回も色んな色のペンキをぶちまけているような。実際「金輪際」という曲に関してはギターノイズを20数個重ねてミックスを行ったらしい。前作でも耳をつんざくような轟音だったが、より鋭利に、そしてより凶暴になっている。


一通り聴いて、この二枚のアルバムは銀杏BOYZのメンバーの真剣な「オナニー」を見ているような感想を抱いた。9年間溜めに溜めまくったオナニーだ。当然純度(なんの純度だ)も桁違いだろう。銀杏BOYZを語る上で外せない「17歳」というキーワード。十代のオナニーと三十代のオナニーは全く違う。十代だったら1日に3,4回抜くことも可能だろうが、三十代だったらこうはいかない。体力的な限界はもちろん、オナニーにそこまでの必然性を見いだせなくなっていく。結婚だってしてるだろうし、結婚してなくてもオナニーするぐらいなら風俗に行くほうが何倍も良いに決まっている。銀杏BOYZもいつまでも十代のオナニーをしてるわけにもいかない。実際、ベースの安孫子、ギターのチン中村は9年の間に結婚して子供まで生まれている。それはサウンドにも顕著に表れていて、きっと9年前の銀杏BOYZを期待していたファンは肩すかしを食らったと思う。ヒップホップ、サンプラー、打ち込み。9年前のファンに「銀杏の新譜さ、今と全然違うんだよ」とアルバムに収録されている「ぽあだむ」を聴かせても信じてくれないだろう。1年前に行って「楽天が日本一になって、田中将大が24連勝するんだぜ」と言っても信じてもらえなくらいに。

とにかく銀杏BOYZはオナニーすることを止めた。声に出すとバカバカしく聞こえるが個人的にはそう思う。メンバーが脱退し、一人となった峯田和伸の本気の「セックス」を見るための舞台が始まる。「光のなかに立っていてね」のノイズという「光」から。

BEACH

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光のなかに立っていてね *通常仕様

光のなかに立っていてね *通常仕様