noise pop

生活

3.失敗しない生き方/常夜灯(2014)

熱血漢が苦手だ。別に松岡修造のようなステレオタイプじゃなくて、SNSで「あー眠い眠い。はっ!○○やらなくちゃいけなかったんだ!大変だあ!でも頑張らなくちゃ!あたし頑張らなくっちゃ!」とこっちが何も聞いていないのにいちいち宣言してくるなんちゃって熱血漢が苦手なのだ。そんなもん黙ってやってればいいのであって、こっちに向けてアピールする必要はない。頑張ることは全く悪いことではないのだけど「なんだかなあ」という気分になる。

失敗しない生き方/常夜灯

どっちがバンド名かアルバム名か分かりづらいが「失敗しない生き方」がバンド名です。東京都三鷹市というベッドタウンで生まれ育った平成生まれの6人組より成り立つコンビニエンス・サバーブポップ・グループ(HPより)。ちょうど1年前の2013年1月に自主制作音源「遊星都市」を発売。それがじわじわと街の灯火のように話題を集め、今回遂に全国流通盤発売となった。

自主制作の「遊星都市」を購入するきっかけとなったのは、彼らのその「冷めた若者」というような佇まいだった。一発見て「格好良い」と思った。三鷹市というベッドタウンで幼年期を過ごし、別に「バンドで有名になろう」とか「バンドで楽しい気持ちになりたい」という考えも持たず、「なんとなく暇をつぶすため」に幼馴染同士で始めたというバンド。その真っ直ぐなまでの捻くれ具合にグッときてしまった。それを表すこのインタビューがとても面白い。シティ・ポップの壊し方 失敗しない生き方インタビュー その1 - mrbq(松永 良平 blog Q)

「失敗しない生き方」は不思議なバンドだ。カントリーやジャズを軸とした音楽だが、特に綺麗に演奏しようという気概は全く感じられない。「常夜灯」に収録されている「私の街」では突然静寂を切り裂くようなサックスが雑音のように鳴り響くし、「煙たい部屋」ではすべての歪んだ音の楽器が暴れまくり演奏自体も破綻一歩手前だ。その冷めた若者たちの演奏は時にこちらを引かせ、そして惹きつける。曲自体は本当に練られていて、おそらく曲を作った当初は「ここはこうしたい」という考えがあったのだろうけど、メンバーの演奏技術や一筋縄ではいかない性格が災いして、この歪であり聴いたこともないような音楽へと変貌していく。そういう理想と現実の狭間でもがくわけでもなく、ただポツンと存在している点がなんとも美しい。

ボーカルは「耳をすませば」で主人公の月島雫が歌っていた「カントリーロード」を思わせる。つまりあまり上手くない。しかしその常に不機嫌で「心ここにあらず」という雰囲気を醸し出しているボーカル・蛭田氏は椎名林檎の100倍セクシーだ。元々はメンバーではなく、ある日突然「君は歌は上手くないけど顔だけが取り柄なんだから」と言われ参加した、とインタビューで語ってて笑った。

失敗しない生き方は三鷹市というベッドタウンでヌクヌクと生活してきたわけだけど、よくよく考えてみると「耳をすませば」の舞台となった聖蹟桜ヶ丘もベッドタウンだ。都心から離れた、夜に人が眠るためだけにやってくる街で鳴らされている音楽。言葉だけ聞くと生気が全く感じられないが、少なくとも失敗しない生き方は、その中で「カントリーロード」という名の灯火を感じさせてくれるバンドだ。だけど本人たちはもう「ベッドルームポップ」と呼ばれることに対して嫌悪感を持ってるみたいだけど。とにかくその斜に構えたような演奏、面構え、言動。「バンドってのはこうあるべきだよ」とかつまんないこと言ってる連中をあっと言わせて欲しい。


常夜灯

常夜灯