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noise pop

生活

14.Promise Ring/Nothing Feels Good(1997)

Promise Ring/Nothing Feels Good

Nothing Feels Good

Nothing Feels Good

かつて90年代のアメリカにはCap'n Jazzというバンドが存在していた。「エモコア」と呼ばれた彼らは10代特有の自意識を誰の手も借りずに全開で放出しており、その気持ちいいまでのブチギレ具合、そして空回り具合に若者は熱狂、伝説的なバンドになっていった。

しかし突然の解散。少年たちは各々の道へと進み始めた。American Football、Joan Of Ark、Owen、Make Believe、Owls…。といった具合にCap'n Jazzが蒔いた種は、確実に芽を出し、全米各地へたんぽぽの種のように散らばっていったのだった。

その中の一つにPromise Ringというバンドがあった。Cap'n Jazzの残党が結成したバンドである。Cap'n Jazzの解散後、主要メンバーのキンセラ兄弟が徐々にポストロックに歩み寄る中、Promise Ringは所謂Cap'n Jazzの「エモ」の部分をしっかりと継承し、耳に残るメロディー、泣きのギター、へろってるボーカル。そしてなによりあの前のめり過ぎて転げまわってる疾走感。それが確実にあった。

僕が初めてこのCDを手に取ったのは大学1年の夏に近所のブックオフであった。明らかに名盤と分かるジャケット。家に帰って再生ボタンを押すと、自分の背中を押すような感覚に襲われた。何かしなくちゃいけない、何かしなくちゃいけない。何をしたらいいか分からないけど、何かしなくちゃいけない。いてもたってもいられなくなった。とりあえず溜まっていた洗濯物を片付けた。

Promise Ringには「体が動き出す」というより「俺も何かをしなくちゃいけない」という感覚にする音楽であった。それはCap'n Jazzで体験したものに近い。「Why Did We Ever Meet」のようなアップテンポな曲はもちろん、「Nothing Feels Good」みたいなデイビーが調子っ外れな声を絞り出すように歌うスローな曲にもそれを感じる。デイビーの歌はふとした瞬間にとてつもない瞬発力で体に入り込み、涙腺を刺激する。それはネオアコのような美しさに、荒々しいハードコア成分が混ざり合うことで生まれる、一種の魔法のようなものだと思っている。