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noise pop

生活

18.Pavement/Crooked Rain,Crooked Rain(1994)

Pavement/Crooked Rain,Crooked Rain

Crooked Rain

Crooked Rain

Pavementが好きだ。適当な演奏や世間・他のバンドを皮肉ったような歌詞、音程を外しまくるボーカル、必要性を全く感じないツインドラムや奇声、そしてその上に乗っかるポップなメロディー。気づいたらほぼ毎日聴いている。スティーブン・マルクマスがニヤニヤしながら「let's talk about leaving(さあ、語り合おうじゃないか)」と勝手に近づいて来るような気がする。

「とりあえず適当に作ってみた」といった感じの1stアルバム「Slanted and Enchanted」があれよあれよという間に世界中で話題になり、それだけではなく20年経ってもその形容し難い魅力に取り憑かれたバンドが後を絶たない。そんな本人達のテキトーな思いとは裏腹に、世界中から賛辞とリスペクトを一身に受けたバンド・Pavement。そんなバンドの2ndアルバムだから、否が応にも期待は高まっていた(はず)。本人達はそんな世間の声もめんどくさいと思いつつ、しっかりとその返答を用意した。それがこのアルバムである。

まず1stにあった「ノイジーな音+ポップなメロディー」が一気に進化した。M-4「Cut Your Hair」なんて明らかに売れ線を狙いすぎな感がある。しかし歌詞は「見た目ばかり気にするバンドマンを批判する」という内容で、特に「Did you see the drummer's hair?(あのバンドのドラマーの髪型見た?)」というラインが痛快だと個人的には思う。M-9「Range Life」では軽やかなメロディーに乗せて世界的に売れていたスマッシング・パンプキンズを批判し、M-12「Fillmore Jive」では「おやすみ、ロックンロールの時代」とそれまでのロックのあり方までも否定してみせた。

Pavementは5枚のオリジナルアルバムがあるが、ここまで皮肉屋としてのマルクマスが見れるのはこのアルバムが一番だと思う。その後のマルクマスは「心に届くような歌を歌いたい」という、らしくなさそうな発言をする程、後期の歌詞はどんどん変わっていった。Pavementの一つの魅力であった「他者を影で皮肉るような歌詞」はなりを潜めたが、その代わり円熟したグルーヴサウンドがどんどん披露されていくことになる。それはあと2枚くらい出した後の話だけど。

まあそれも当たり前っちゃあ当たり前な気もする。最高のひねくれ者集団だった彼らは、世間からの「次は何に対して噛み付くのだろう」という反応を瞬時に察知し、そのイメージに収まることを否定したのだと思う。「アンチ・ロックスター」というアイコンを即座に捨て、さっさと次のステージに移動した。この人たち(主にマルクマス)は本当に頭が良かった。

そんなバンドとして好き放題やってた頃のアルバムだけど、別に歌詞に言及しなくてもポップなメロディーとへなったバンドサウンドがあれば、もうそれで十分だ。M-1「Silence Kit」なんてイントロのギターコードをジャ〜ンと鳴らすところで泣きそうになってしまう。再結成来日ツアーの一曲目がこの曲だったと知って、心底行けばよかったと後悔して枕を殴っていた。「Silence Kit」なのか「Silence Kid」ってことぐらいどうでもいい。