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noise pop

生活

20.Theピーズ/Theピーズ(2003)

Theピーズ/Theピーズ

The ピーズ

The ピーズ

20回。相変わらず有名どころの何百回も語られているであろうところを一度解体して再構築する、というやり方をどうやって打破したらいいのか。

というわけでTheピーズ。自分にとってTheピーズというバンドは主観抜きにしては語れない。自分の姿とダブらせてしまうからだ。とことんどん底まで落ちた「ダメさ」と「やるせなさ」に高校時代の僕は色んな意味で抉られた。このアルバムには収録されていないが、「リハビリ中断」というアルバムに収録されている「実験4号」を初めて聴いた時の衝撃。ベースボーカルなのにめちゃくちゃ動いて尚且綺麗なベースライン…、というところは正直あまり気にならなかったが(しかしライブで見たときは感動した)、あまりにも全てを悟りすぎて、嫌な部分を見過ぎて絶望に打ちひしがれた歌詞。

どれだけクサれば晴れるだろう
止むかよ 時間切れ
まんまと潜り込み 閉じ込めて
君と最悪の人生を消したい

ゆーワケで せっかくだし 悪いけど
続くよ まだ二人いる
何かまた作ろう 場所は残ったぜ
君と最悪の人生を消したい

そして最悪の人生を消したい

この「Theピーズ」というアルバムは、実験4号の衝撃を引きずったまま、高校2年の夏に自転車で20分程のところにある成田本店という書店まですっ飛ばして購入したのだ。八戸にはCDショップがない。ついこの間も新星堂がぶっ潰れてブティックになってた。そういう音楽文化がとことん根絶やしにされた地域に一枚だけ置いてあったアルバムである。値段は3000円。た、たけえ。でも絶対にこれは聴かなければいけない、という意味不明な神の啓示に諭され購入した。

僕はこれが活動再開しての最初のアルバムだということどころか、ピーズが一回活動休止しているという事実さえ知らなかった。現代っ子の最強アイテム・YouTube(あの頃はくそ重かった)で視聴した「実験4号」が収録されているアルバム「リハビリ中断」は、大木温之(ハル)が長年連れ添ったギターの安孫子を切ってまでも作り上げたアルバムであり、上記で勝手に引用した歌詞にも「何かまた作ろう 場所は残ったぜ」「君と最悪な人生を消したい」というネガティブに見えて微かな希望・祈りに手を伸ばしかけているフレーズが見え隠れしている…、なんてことももちろん知るはずもなかった。

活動再開の一曲目「生きのばし」ではいきなり「死にたい朝 目覚ましかけて 明日まで生きている」と歌われる。「生きのびる」ではなく「生きのばし」。一度死にかけたハルが選んだのは、生きるか死ぬか、Dead or Alive的なやり取りの生き方ではなく、「毎日クソだるいけど死ぬのもなんだかなぁって感じするからとりあえず明日まで生きてみるわ」という半ばヤケクソな生き方だったように思える。

バンドが活動休止になり、メンバーそれぞれが違う仕事に就いた。しかし何だか違う。どこいっても何してもだるいのは変わらないじゃねえか。だったらもう一回バンドやってみる。それぐらいの温度。「待たせたな!無事に生還したぜ!」なんて感じではなくて「なんとなく戻ってきた」。隣に一度切られたギターの安孫子を連れて。

ピーズと他のバンドが決定的に違うと思う点は、自分の生き方の障害になっている事柄(ここでは「ダルい日常」「暗い未来」「死にたい」)に対するアプローチの仕方だと思う。普通であったら自分の邪魔になっているモノに対して「ぶっ壊せ」「前に進め」「明るい未来は自分で掴み取れ」などといったフレーズが自然と順序立てられているが、ピーズには聞き手を鼓舞するようなフレーズはほぼ使われていない。このアルバムにも「変わらないで何もしないで 君を待っていた」「もう一晩くらい頑張ってみよーか」「いっせーのせーで生きのびるんだ」という、あくまで自分主体の何もせずにただ、流されるままに生きている的なフレーズが散りばめられている。高校時代の自分は「お前がどうしようがこっちの知ったこっちゃねーけど、俺はとりあえずだらだら生きてみる」という風に捉えてしまった。

最後に収録されている「グライダー」もそんな「どうでもいいクソだるい変わらない日常でいい」ということが歌われている。

10年前も10年先も
同じ青な空を行くよ
スローモーションが浮かんでいくよ
もうずっとグライダー yeah ボクはグライダー

ピーズが飛ばしたグライダーは、今でもギリギリのところをフラフラと飛んでいる。実は仙台に来て初めてライブハウスで見たライブはピーズだった。ボ・ディドリーの「Rock'n Roll」をSEに登場したピーズのライブは紛れもないロックンロールだった。「グライダー」はそのライブではやらなかった。次のライブもその次もやらず、僕が初めて聴けたのは昼下がりのアラバキロックフェスの会場だった。ギターの音が空気と同化して空に吸い込まれていく。空をグッと見渡すとピーズが10年前に飛ばしたグライダーがフラフラと力なく飛んでいたような気がした。