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noise pop

生活

初夏の日

鈴木がやってきた。鈴木というのは引っ越し屋の名前で、とりあえず色んな業者に引っ越しの見積もりを出してもらい、その中で一番安かった業者に頼んだら、やってきたのが鈴木だった。一応名刺を貰う。ダルマと肉だんごを足して2で割ったような体形の鈴木。これでもかと細く剃り込んだ眉毛が帽子から覗く。鈴木の後ろには「とりあえず時給が良いから…」という感じで付いて来たバイトが二人いた。CDが100枚近く入った段ボールをふた箱を一人で担ぎあげ「壁に傷つけんなよ」とバイトに脅しをいれる鈴木。その脅し、自分に入れられた気がしてビクっ!てなる。

「どうもお世話になりました」

「いえいえ」

「僕このアパート住んで7年っすよ」

「本当ね、こんなに住んでた人ってミヤザキさんだけよ。珍しいわー」

大家のおばちゃんに遠まわしに馬鹿にされたような気分になる。鈴木はほぼ一人で部屋の荷物を外へ運び出していた。残されたバイト達は「とりあえず常に動いといて怒られないようにしとくわ!」って感じで無駄にせかせかと走り回っていた。大丈夫かこいつら。先に新居に向かう。

「ここら辺の道、あんまり詳しくないんですよね」と何故かキレ気味で言って来る初老のタクシー運転手との一触即発の空気を吸いつつ新居に到着すると、既に鈴木とバイト達が到着していて、僕は何故か草食動物的直感で「殺される」と思い急いで鍵を開けた。部屋に入ると紛れもない新居だった。干したばかりの太陽を吸いこんだタオルの匂いがしたような気がする。鈴木が一人で洗濯機を運んできて「これどこに置きますか?」と平然と聞いてきた。思わず化け物を見るような目をしてしまう。おい、ここ、二階だぞ。しかも階段しかないんだぞ。そんな調子で部屋に荷物が運ばれてくるのをボーっと突っ立ってながら見ていた。真っ白い雪が積もった部屋に、どんどんどんどん足跡がついていく。作業が完了したので鈴木とバイト達に料金を支払い、彼らは帰って行った。バイト達はマジで何をしに来たんだろう…。

段ボールしかない部屋。とりあえずベランダに出てタバコを吸う。4月下旬にしては暖かすぎるくらいの風と日差しだったが、ベランダのコンクリートはヒヤリと冷たかった。灰皿がないから近くの自販機でコーヒーを買って部屋で飲み干してそれを灰皿代わりにベランダに置いた。Advance Baseの「A Shut-In's Player」を部屋で流して整理をした。一曲目の「Summer Music」が流れてきて、この部屋に人の体温が注ぎ込まれたような気がした。まんが道が出てきたので思わず読んでしまう。二時間後に来客。翼くんとヒラケンだった。後から気づいたけど、新居はヒラケンの家から自転車で15分くらいの距離だった…。夜、早速全裸にさせられてパンツをベランダに捨てられ遂にぶち切れる。初日からこれだよ。

 

前の日記から丸二週間くらい空いていたけど、下書き書いてすぐに消してまた書いて消して…、ということを繰り返していた。更新してないのに毎日地味に20くらいアクセスカウンターが回っているので嬉しい。

一年ちょい前くらいに仕事を辞めたとき、何を血迷ったかライターになろうと思い、ハローワークで適当に探した未経験OKのライター職という、あまりにも上手く出来過ぎたバブル期のクソ映画みたいな業務内容の会社を受けた。そこで面接官に「なにか書いてるの?」みたいなことを言われて、完全にテンションがぶち上げバースト状態だった僕は「ブログ毎日書いてて…」と言ってしまい、ブログのURLを控えられた末、落ちた。そのときの最新記事が「エスパー魔美に出てくる高畑くんの素晴らしさ」について書いているものだったので、死にたさ5割増だった。まあ受かってたら受かってたで死にたくなっていたと思うけど。あとでハローワークで聞いたら、その求人を見たものは皆、その門戸の広さや新しいことを始められるという期待感から、一念発起して受けるのだけど、全員落とされているということだった。それだったらまだいいけど、こちとら全裸にされたり別に書かなくていいことを赤裸々に書いてる日記まで見られた末に落とされているのだ。落とされた理由は多分、日本語が出来ていないからだと思う。あと人間性に問題があるからか。

あれから1年と少しが経って、僕は新しい仕事をなんとか始めて引っ越しもして、その他にもなんやかんやで色々あった。音楽も好きだけど、やっぱり何か書くことが好きなのだと思う。自己満足でもいい、自意識の塊でもいい、役に立たなくても、ていうかむしろ立たない方がいい。日本語が出来ていなくても喋るのが下手でもいい。才能が無いことなんて昔から知っている。僕はちょっと褒められるとすぐ調子に乗る。ただのアホだ。その頻度が一番多かったのが、今まで生きてきた中で「文章を書く」ってことだった、というなんとも粗末なお話しだ。だから僕は好きだ。文章を書いて、それにダイレクトで反応が返って来ること。それが一番嬉しい。もっともっと色々書きたいと思う。あらためて考えても、なんてトンチンカンなことを言っているのだろうと自分でも感じる。でも僕は好きだ。なのでこれからもう少し更新の頻度を上げていこう…、と思った。